
金紗のベールとノクターンU 東大陸見聞録−獣ヶ原で遠吠えを その6
ZAZA9013
前回までのあらすじ
魔法もつかえず、「喋るジャンガリアン・ハムスター」になってしまったケフカ。
そんなケフカをかばいつつ28号とチョコフレイク号とチョコナッツ号は
大三角島を横断する旅を開始した。
キマイラを倒し、デバウアーの殻をかぶってモンスターに偽装した一行は
大三角島の森を出た。
海岸にはオルトロスがいて、自分の貯めた小銭を数えているところだった。
1000ギルで向かいの東大陸に連れて行ってくれるよう、
頼んだ28号だったが、オルトロスの返事は「タコすみ攻撃」だった。
目指すは解呪の石がある、東大陸獣ヶ原南端の三日月山の頂上!!なのだが・・・。
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「うわっ!?」
28号は、突然目の前が真っ暗になった。手も顔もぬるぬるする。
きっと頭から真っ黒になったのだろう。
あわてて、ポケットからハンカチを出して顔をこする。
「えへへへっ!」哂うオルトロスの声が聞こえた。
「1000ギルお礼できるってことはぁー、
1000ギル以上確実に持ってるってことでぇー、
お前をたおして、荷物もらって売りさばいちゃえば、
東大陸いかなくっても、オルトロス様丸儲けっ!!」
ぴしゃぴしゃとオルトロスは自分のそばの岩をはたいた。
「そんなー・・・それじゃ、強盗ですよ。
オルトロス様、そんなことしちゃいけませんよ。」
「それは人間の基準。ワシはモンスターだから、何をしてもゆるされるんじゃー」
オルトロスは28号の抗議を無視して、
自慢の長い足を28号にむかってにゅーっと伸ばした。
「バーカな人間。」
28号は、墨が目に入ってよく見えなかったが、
オルトロスの声のするほうに向かって
力いっぱい槍を投げた。
オルトロスは2本の足ではっしとそれを受け止めた。
さすが人間より太くて立派な神経組織を持つタコの仲間だ。
しかし、止めたつもりの槍に込められた力は予想外に強く、
10cmほど頭に刺さってしまった。
「痛たたたっ!オルトロス様にこんなざっくりしてただで済むと思うなよっ!!」
たこあしの打撃が28号を滅多打ちにする。
28号のかぶっていたデバウアーの殻が吹っ飛んだ。
視力の回復していない28号は、まともに食らって砂浜に倒れこんでしまった。
オルトロスは槍を頭から抜くとチョコナッツ号に向かって投げた。
槍はチョコナッツのそばの地面に刺さった。
2、3歩後退したチョコナッツだが、心配そうに28号のほうを見ている。
28号は、背中の斧を抜きながらエスナを唱えた。
視力が回復した。
「おまえも、おまえの旦那も絞め殺しちゃるけんねー。」
オルトロスの足が28号の体を捉えた。
「それはだめですっ!!」
28号はオルトロスに向かって突っ込んでいった。
「へへーんっ!ワシの方が絶対強いもんね。」
とびこんできた28号の体をぐいぐいとオルトロスは締め付けた。
人間ならすぐに動けなくなり、ぐったりとしてしまうのだが、相手が悪かった。
締め付けられても、28号はそれに負けないで
斧の背でポカポカとオルトロスの頭を殴りつけた。
「いたたたっ!!でもそんなの悪あがきにすぎないけんね。」
「話が通じるなら、きいてもらえませんかっ!」
なおも、28号はなぐりつづけた。
「いたっ、いたいっ!かじってやるけんねっ」
オルトロスの大きな口が28号に迫る。
タコには似つかわしくない大きな牙がぞろりと現れた。
28号はファイラを唱えた。
オルトロスにはぜひ働いてもらいたい。
炎の塊がオルトロスの顔面を焼いた。
「あちっあちちちちっ!!」
28号に絡み付いていた足が、一瞬で全部引っ込んだ。
足で顔を覆っている。
火に弱いのかもしれない。28号は再度ファイラを唱えた。
今度はオルトロスの背後を狙った。
「うわぁあちちちっ!!」
オルトロスの足が後頭部にも回った。
足で頭部をぴったりと覆い、玉のようになっている。
28号はオルトロスの足をつかむと、
もう一発ファイラをお見舞いした。
「どうか、おねがいします。・・・・向こう岸へ
連れて行ってくれるだけで良いんです。」
といいながらボコボコに殴りだした。
「いたいたいたっ!!わかった、わかりましたから!
殴るのやめておねがい」
耐えかねたオルトロスは28号に向かって懇願した。
「それ以上やられたら、死んでしまうけん、かんべんして。」
足2本で合掌のポーズをする。
「もう、あばれませんか?」28号はようやく打撃の手をゆるめた。
「あばれない、あばれない。オルちゃん、自分より強い奴には
素直じゃけん・・・・・あんたのゆーこと聞いてやるから・・・」
「ほんとうですか?」
28号の合図でチョコフレイク号とチョコナッツ号が近づいてきた。
チョコナッツ号は28号の槍を咥えてきている。・・・かしこい。
「そんな奴は殺してしまえ!!」ケフカがリュックの中から鼻先だけ出して言う。
「でも・・・旦那様、殺したら向こうへ行けません。」
「じゃ、足全部切って焼いてしまえ!性悪タコの世話になどなりたくないぞ。」
「足全部切って焼いてしまったら泳げません。早く着くことが優先ですよね?」
「むぅうぅ・・・。信用できるのか、そんな奴?」
「あんまり、信用はできませんが・・・殺すのはいつでもできます。旦那様。」
「・・・・・・まぁ、いい。早く行くことは僕ちんの願いだからな・・。」
「はい。」
激しい痛みとめまいの中、オルトロスは28号が会話しているらしき
チョコボの上を見た。
オルトロスには今のケフカの超音波領域の声は聞こえない。
・・・・・・・・・どうみても荷物しかない!!
一人で会話してるぞ、この兄ちゃん。危ない人じゃあー。
やばやばやばっ!あんま関わらんほうがいいかも、
何でかしらんが魔法使ってるし・・・。
さっさと東大陸へ連れて行って、
縁切ったほうが良さそうじゃあー・・・。
と、オルトロスは思ったのだった。
「連れてってやるけれども、あんたら船持ってんの?
それとも浮き輪あるの?」
「少し待ってください、オルトロス様。」
28号は自分とチョコボたちにレビテトをかけた。
ふわりと浮いたチョコナッツ号に飛び乗った28号。
「チョコボの足を持っていただけますか?」
「ああ・・・・。なーるほど・・・。」
オルトロスはチョコボの足を持つと海へ向かって歩き始めた。
「はー・・・・あんた、フツーに魔法つこてるけど・・・本当に人間?」
「いえ・・・どっちかというと、人型モンスターで消しゴム扱いです。」
「ふーん・・・よく化けてる・・。
人間だと思わなかったら、ケンカは売らんかったかもしれんのぅー。」
頭にできたこぶをさすりつつ、オルトロスはぼやいた。
消しゴム扱いって、殺し屋とかそういう意味なんじゃろか・・・?
一人で槍と、剣と、斧を装備しているし、荷物には弓矢もある。
モンスターなら、そういう仕事はあるだろうし・・・。
オルトロスはざばざばと波を掻き分けて、海に入った。
地上をひっぱるより、スピードが急にアップした。
もう少し深いところへ行ったら、
海の底にこいつら引きずり込んでやろうか・・・。
そんなことを思いかけていたオルトロスは考えを改めた。
ちらっと上を見ると、殻をかぶった28号が
槍を片手にオルトロスをじーっと見ている。
いつでも刺せる構えだ。
タコのワシには見えんだけで、あのチョコボには
旦那様とやらが載っているのかもしれん。
多分、あいつの旦那様はあいつより強いのだろう。
そんな奴と戦うのは、このバッドコンディションでは嫌〜。
しばらく無言でオルトロスは泳いだ。
「28号さん。今真ん中くらいじゃ。」
オルトロスは28号に話しかけてみた。
「オルトロス様、無理言ってごめんなさい。」
ごめんも何も、ワシもうぼこぼこじゃけん・・・。
オルトロスは、下手に刺激しないようにしようと思いつつご機嫌をとる。
「欲出したワシが悪かったけん、その話はなかった事にしてな。
・・・28号さん、アンタの旦那様ってやっぱり
・・その、あんたよか強いんかの?」
「強いですよ。軽いつっこみでも、死人が出るみたいですから。」
「ふーん・・・。魔法は使えるの?」
「魔法は、すごいです。
全ての技を見せてもらったわけじゃないですが。」
「気になるのぅ・・・旦那様ってどんな感じなんかのぅ?」
「うーん・・・全身に白い毛がはえてますね。
2本の足で立って歩くこともできますが、
4つ足で移動するほうが早いです。」
「尻尾は?」
「あるけど短いです。」
全身白い毛?・・・魔法を使えるということは、モーグリだろうか・・・。
オルトロスは思った。
「ふーん・・・爪はどんなん?」
「尖ってます。前は長かったですね。赤くするのが好きみたいですよ。」
「歯は、牙とかあるの?」
「ほっとくと、伸びてくるみたいで、いつも硬いものを齧っていますよ。」
「ヒゲは?」
「長くて、きれいで、光り輝いています。」
やっぱり、モーグリのなのだろうか・・?
オルトロスは今までに出会ったモンスターの姿を思い浮かべた。
該当するものは、思い出せない。
「羽は?」
「羽根?普段なら頭につけてますが・・・。」
「好きな食べ物とかあるの?」
「キマイラはお嫌いみたいです。」
「・・・・・・・・・。」
オルトロスは、凶暴なモーグリの姿を想像した。
頭にコウモリの羽を持ち、長い爪を鮮血に染めて、
キマイラをわしづかみにして
頭からかじっている。んで、まずいっ!ぺっぺっと吐き出す。
そんなものがいてもおかしくはないけど・・・。
オルトロスの沈黙に28号が笑顔でフォローした。
「大丈夫ですよ、タコとかイカはお嫌いですから。
旦那様はオルトロス様を焼いて食べたりはしません。」
「けど、刺身は好きなんて落ちは無しね。」
「それは大丈夫です。オルトロス様。」
オルトロスはほんの少しだけ安心した。
「しかし、あんたなー。普段は人間に混じって暮らしとんのか?」
「ええ。」
「気疲れしないか?ま、ワシにとっちゃ人間はカモじゃけん、どーでもいいけど。」
「うーん・・・。旦那様のほうが大変みたいですね。
いつも暗殺されるんじゃないのかって、気苦労が絶えないみたいです。」
「ふーん、そーか。ワシも時々、人間が団体で
仕返しに来るんじゃないかと思うときもあるけんのー」
「さっきみたいに悪いことするからですよ。」
「えへへへ・・・、ああゆうのはたまーによ。たまにしかしないけん。
つい、魔が差したっちゅーか、そーゆーこと。
・・・・ふぅ・・・あと少し・・・。」
オルトロスはチョコボを引っ張りながら泳いだ。
狭い海なので流れが早い。
しかし、さっさと28号たちと別れたいオルトロスは懸命に泳いだ。
東大陸は見る見るうちに近づいてきた。
茶色い砂浜にオルトロスは上がった。
太陽はすでに、獣ヶ原に沈んでしまっていた。
「はー・・・ついた、ついたっとぉー。じゃ!」
チョコフレイク号とチョコナッツ号から足を離すと、すぐ海に帰ろうとした。
「待ってください、1000ギル忘れていますよ。」
オルトロスは足を28号にぐいとつかまれた。
「おぉっと!どうもありがと、じゃあねっ!」
お金をにぎったオルトロスはさらにひきとめられた。
「あのー、もう一つお願いがあるんですが・・・・。」
28号は地図を出して説明した。
「この獣ヶ原の北、ドマへ行くのに川を越えるお手伝いをお願いしたいのですが・・・。
僕たちは、多分ずーっと旅をすると思うんですけど・・・。」
「ん・・・っ、あ、ここ、この辺なら歩いていけば
チョコボで渡れるところもある・・・かなっ?」
「ほんとですかー―――?」
「あ、も、ほんとほんとほんと。」
「面倒だから行きたくないだけでは?
海の中を通って先に行っていても良いのですよ。」
「待ち合わせするんかい!?」
目印もなく、時間すらわからないのに・・・。
この人型モンスター、いかれてんのか!?
こうゆうのは世間の秩序安寧を守るために、誰かに退治してもらったほうが
良いかもとオルトロスは思った。
自分で、ではないところがオルトロスだった。
「だめですか?」
「あー―・・・・、オルちゃん、迷っちゃうな。」
「1000ギルお支払いします。どうかお願いします。」
「斧片手でお願いされると、断れんのうー。
じゃ、獣ヶ原よりの岸辺で待ってる。
万が一会えなくても、ワシ、すっぽかしたわけじゃないけんね。」
「それでは、どうかよろしくお願いします。」
28号の頭が下がりきらないうちに、オルトロスは海中へと消えていった。
リュックの中からケフカが顔を出した。
「袋の中でうとうとしながら聞いていましたよ。」
「ケフカ様・・・。」
「28号、交渉が上手くなりましたね。
ああいう口達者なモンスターは少し痛めつけないといけません。」
「ありがとうございます。」
「あいつ・・・、見た目よりきっと賢いですよ。」
ケフカはヒゲを手でこすった。
「僕よりは上だとおもいました。ケフカ様のことが気になるみたいでしたね。
ちょっと、心配です。」
「もう暗くなったが、少し内陸に入ったところでキャンプしよう。
夜にタコの大群が押し寄せてきたら困るからな・・・。」
「そうですね、オルトロス様は川のところで待っていてくれるでしょうか?」
「僕ちんにはわからないが・・・、待ち伏せして仕返しするってのは
あるかもしれんな。やられたらやりかえすのが普通だろ?」
「そういうのが普通なんですか?」
「うーん・・・。お前は意地がないというか、プライドがないのだな。
ま、いい。あとで、紅茶をいれてくれ・・・。
それと、顔を洗ったほうがいい。お前、真っ黒だぞ。」
質素で簡単な夕食の後、28号は紅茶をいれた。
ケフカの希望で紅茶は普通の金属製マグカップに入っている。
「良い香りだ。おちつくな。」
生き物・モンスター辞典の上に座ったケフカがヒゲと鼻をせわしなく動かしている。
辞典はマグカップの半分くらいの高さがある。
「獣ヶ原には、世界中からモンスターが集まってくるって
本に書いてありましたけど・・・、また、怖いのが出るんでしょうか。」
星空の下、モンスターと大きな蛾が怖かったので、
ランタンはあえてつけない28号が、紅茶を一口すすった。
「出るだろう。モンスターの数が多いから、人間はこのあたりには住まないのだ。」
「デバウアーの殻・・・、ここで効くでしょうか?」
「モンスターは、基本的に自分より大きな相手には
あまり向かってこないはずだが・・・。
ここの連中に効くかどうかはわかりませんね。」
「僕たちが強そうに見えたら、襲ってこないんでしょうか?
・・・ドラゴンに見せかけるとか。」
「さあねぇ・・・。向こうだって空腹とか色々あるでしょうし。
チョコボ2匹でドラゴンに見える仮装を考えるよりは、戦って勝ちなさい。」
「・・・そうですね。ケフカ様。紅茶、冷めましたよ。」
「そうか。」
ケフカはマグカップのもち手の上に登って、紅茶に口をつけた。
鼠になってからのケフカは、熱い食べ物が苦手になっていた。
「ぬるくて飲み頃だ。」
一口飲んで、ケフカはグルーミングを始めた。
周りからは沢山の虫の声が聞こえてくる。
きちきち、りーん、ぎしぎし・・・、ひとつひとつはきれいな音かもしれないが、
沢山あわさるとただの騒音。
暗闇の中を何かが近づいてきた時に、それは途絶えるだろうから
警報代わりにはつかえるかもしれない。
28号はそんなことを思った。
「ケフカ様、どうして獣ヶ原にモンスターが集まってくるんですか?」
「僕ちんが思うに、きっとこの地には何かがあるからなのだ。」
「何かって、なんですか?」
「何かだな。・・・その昔、世界はクリスタルが支配していたんだそうだ。
石の分際でどうやって支配していたかは知らんが。
地水火風、光と闇のクリスタルがあったらしい。
千年前の魔大戦の頃にはクリスタルはただの道具だったらしい。
本当かどうかは知らんが、それの破片が埋まっているとかな・・・。
そういう話もある。」
「なるほど。」
「魔大戦の頃の違う話もある。なんだったかな・・・
町があって、町の名前を忘れたな。もう少し詳しくて
信頼性のあるお話なのだが、そのうち話してやる。
しかし、それも確証は無い、あっ!?」
ケフカがマグカップの中に転落した。
「ケフカ様っ!?」
28号はすぐにカップをひっくり返して左手でケフカを受け止めた。
ケフカを自分の口元に持っていく。
「いたたたっ!」
ケフカが28号の唇に噛み付いた。
下唇からケフカがぶらさがっている。
「ケフカ様・・・痛いですぅ・・・。」
ケフカは28号の手に着地した。プルプルと身を震わせ紅茶のしずくを払った。
しかし、体は薄く紅茶色に染まっている。
「ふん!!おまえ、今、人工呼吸して心臓マッサージしようとしたろう!?」
「はい。・・・いけませんでしたか?」
「流れとしてはあっている。けど、今の僕ちんがそんなことされたら、
パンクした上に肋骨骨折するぞ。溺れて意識が無くなってからにしてくれ。」
「あっ・・・。そうですね、すいません。」
「それに、不意に落ちたわけじゃない。
・・・たまに紅茶風呂に入ってみたかっただけだ。」ケフカは言い張った。
「落ちたようにしか見えませんでしたが・・・。」
28号はケフカを拭こうとハンカチを出した。
けれど、それはオルトロスのすみで真っ黒だった。
「海の上を通ってきて、体がしょっぱくなってしまった。
お前も明日は洗濯して、ついでに体もあらうのだ。全体的に汚いぞ。」
「はい・・・・」
その夜、28号はケフカが走り回る音を聞きながら眠った。
ケフカが顔のそばを通ると紅茶のにおいがした。
それがなんともいえず可笑しかった。
次の日、28号は南西の方角に川を発見した。
川は流れが緩く蛇行していた。
折りたたみ式のバケツに、魔法でお湯を沸かした。
まず、ケフカを洗った。
「この石鹸、船にあったのとは違うな。」
28号の手の中で泡立てられながらケフカが言った。
「高級化粧石鹸だそうです。バーブラさんから貰いました。」
「ふーん、おべっか使いだな。よくすすいでくれ、毛づくろいのたびに
石鹸の味がしてはかなわん。」
荷物をおろしたチョコナッツ号とチョコフレイク号は水浴びをしている。
ケフカをタオルでぬぐってから、ケフカの入っていた大事袋も洗う。
どんぐりの器以外にも、胡桃や木の枝が沢山出てきた。
「ケフカ様、食べきれなかったんですか?」
「ん?気にせず捨ててくれ。」
何故かケフカは恥ずかしそうだった。
毛が乾いたケフカはトイレの箱の中にいた。
トイレは28号の手により日々バージョンアップされていた。
最初は草だけだったのだが、花が一輪入るようになり、
今は草は真ん中だけで回りは花で囲ってある。
眠いと言ったケフカを、28号はリュックの中にもどした。
それから、棒状の洗濯石鹸を使って洗濯を開始した。
もう、代えの靴下が無い状態だったのだ。
来ている服も装甲部分を外して洗った。オルトロスのすみのおかげで泡が黒かった。
自分の体も洗った。頭からはやっぱり黒い泡が出た。
日差しは強く、木にかけた洗濯物は乾き始めていた。
チョコボたちも日陰で休んでいる。
ところどころに小さな森はあるけれど、草原がずっと続いている。
どちらを向いても地平線がある。
遠く南のほうに青い山がみえた。きっとあれが三日月山なのだろう。
4、5日かそれ以上かかるかもしれないと28号は思った。
ケフカは28号に起こされて、お昼を食べた。
魚の焼いたのをひとかけら、おやつに胡桃をもらうと
だいじ袋の中にもどった。
実はお風呂に入ったことで、かなり疲れていた。
だいじ袋の中にただよう石鹸のにおいが気になったが、
それを口には出さなかった。
自分のにおいが無くなると落ち着かないのだけれど、それを認めると
ねずみ化が一層進んでしまうような気がしたのだ。
洗濯物はあと少しで完全に乾きそうだった。
しかし肝心の旅行用ライトメイル仕様の黒い服がまだ乾かない。
布地を何枚も重ねて作ってあるので、
振っても絞ってもすぐには乾きそうにない。
表面だけはいろいろとコーティングしてあるので、
水気は振っただけでなくなったのだが・・・。
28号は洗濯物をかけていた枝を斧で切ると、
チョコナッツ号にくくりつけた。
28号はチョコフレイク号に乗った。
ケフカを早く人間に戻したかったのだ。
いつもの服は裏返して、チョコフレイク号の荷物から飛び出ている槍にかけてある。
槍の代わりに弓矢をすぐ取れるところに置いた。
そして、自分にプロテスとシェルをかけると
南へ向かってチョコボたちを走らせた。
つづく
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