金沙のベールとノクターンその10   by ZAZA9013


28号が伸びをして甲板を振り返ると、水兵たちが集まっていた。
2列に並んでいる。

28号も一緒に並んだ。ケフカは来ない。
ベクタ国旗掲揚をし、国家斉唱の後、船長の訓示があり、そのあと体操をして艦上体育が始った。
艦上体育はじめの号令で、皆甲板をぐるぐるとランニングした。
28号もつい一緒に走った。

一汗かいた後、持ち場へ戻ったものもいれば糧食確保のため、船尾にて釣りざおを握っているものもいる。
28号は釣りざおを握っている兵士に声をかけた。

「海軍って釣りも任務のうちだったんですね。」
28号は釣りはやったことがない。話をきいたことがあるだけだった。
「そうだよ。えーと28号さんだっけ?ケフカ様の秘書の。」
「そうです。よろしくお願いします。」
「俺はバズ。よろしくな。担当は魔導レーザーなんだけど、今日は仕事は休みなのさ。」
「ああ、そうなんですか。」
バズとなのった兵士は、ベクタ海軍の運動着を身につけていた。
見た感じは30半ばくらいである。多分士官であろう。
彼も日によく焼けていて、短く刈り上げた黒髪が似合っている。
体格は小さめだったが、ケフカよりも骨太で手足が大きい。
目は黒に近いダークブラウンで、右耳の下に小さいがえぐれたような傷跡がある。

「魚ってのは思いっきり北か南の寒い方がうまいんだぜ。」
バズが28号に語り出した。
「そうなんですか。でもこの船は赤道の方へ向かっているんですよね。」
「最悪だよなー。俺は油の乗った魚が好きなんだよ。あったかい所の魚はあっさりしすぎてなー。」
「そうなんですか。僕は船は初めてなので・・・・」
「ふーん・・・。海軍はいいぜ。ケフカ様の秘書なんてやめて海軍に入ったらどうだい?」
と、バズは笑った。

「え、僕は自分の希望で部署を決められる身分ではないので・・・・」
「ああ、そうか。でも、海軍はいいよ。艦船が充実している国が他にはないから
撃沈される心配がない。せいぜい海賊と嵐とモンスターに気をつけていればいい。」
「はー・・・。じゃ、陸軍が一番辛かったんですね。」
「28号さん、陸軍にいたのか・・・そりゃ大変だったね。
ま、海軍じゃ出世はできないが、戦死はないだろうってのが定番だよ。
陸軍の連中には運送屋呼ばわりされているけどね。普段はのんびりしているよ。」
「戦闘がほとんどないところもあったんですねー。知らなかった・・・。
あっ引いてますよ。」

「おっ」バズが棹を引き上げると白と黒の縞模様のシマダイの稚魚であった。
「バズさん。これも食べられるんですか?」
「こんな小さいのはいらねぇ。」
バズはシマダイを放してやった。

「ケフカ様の秘書って大変なんだろ?」
バズは釣り針に餌をつけると、海へとたらした。
「え?うーん・・・どうなんでしょうね・・・。」

28号はとまどった。大変なんだろうか・・・。
ケフカ様は気難しい・・・でも、それよりも戦闘で人を殺さなくてもいいから気が楽なんだけど。
「気に入らない事があれば、村ごと皆殺し、側近もかなり殺されてるって話だが・・・」
「そういう話はよく聞きますが・・・、僕は長持ちしそうな感じがします。
・・・・・正直な所、僕はもうどこの部署にもおいてもらえないみたいですから。」
「左遷でケフカ様のところか・・・。ああ、人事って怖いなぁ。」
「左遷っていうか・・・僕の場合は処分された所をケフカ様に
拾っていただいた・・・という感じですね。」

「ふーん。ま、やばくなったらトンズラしなよ。人間、命が大事だからな。」
「ははは。それより、セブロン船長ってどんな人なんですか?」
「船長?ああ、立派な人だよ。ああいう人が指揮官で良かったよ。わりと、雰囲気いいだろ?この船。
船長がバカだと最悪だぞ。」
「やっぱり、立派な人なんですね。僕もそう思いました。」
「だろ・・・。おや、君の指揮官が来たようだよ。」
バズの言葉に28号が振り返ると、ケフカがこちらへやってくるところだった。

「しかし、素顔があんなんだとは知らなかったなー。思ったより全体的に小さい人なんだね。
もっと、妖怪っぽい奴かと思ったんだけど・・・。」
何気ないバズの言葉にギクッとした28号である。
「ま、まさか、バズさん・・・ケフカ様のこと、きれいとか思ったんじゃないでしょうね。」
「あぁ?そりゃ、整った顔だなーとは思ったが・・・あの性格じゃ・・・。」
「えっ!もしかして秘書になろうなんて思いました!?」
「それだけは、遠慮する。死んでもごめんだ。」
28号はバズの言葉にホッと胸をなでおろした。
「うん。そのほうがいいですよ。」
「?」

ケフカが釣集団の方へやってきた。
「ふーむ。釣か・・・・。肉が無くなったら毎日魚を食べる運命なのだな。」
嫌そうに言った。
「はい、そういうことになります。ケフカ様。」
返事をしたのはバズであった。この中では一番偉いらしい。
「魚か・・・。」ケフカは何ごとか考えている様子だった。
「ケフカ様、魚はお嫌いなんですか?」28号は思わず訊いた。
「魚によるな・・・・。イカは嫌いだ。ま、いい。28号行くぞ。」
「はい。ではまた、バズさん。」
「おう。今度は28号さんの分も釣棹用意しておくよ。」
「ありがとうございます。」
28号はバズに手を振ってケフカの後を追った。

階段をおり、2人はエンジンルームへと向かった。
エンジンルームでは、魔導研究所の研究員が5人ほど計器をチェックしていた。
突然の素顔のケフカの訪問に、誰が来たのだ?と怪訝な目つきで見ている。
「おはよう、諸君。」耳障りなケフカの声が、エンジンルームに響いた。
28号は研究員の緊張が一気に高まったように感じた。

「おはようございます。ケフカ様。エンジン担当のアワヅです。」
「こいつに、魔導エンジンの中を見せてやりたいのだが。」と、ケフカは28号を指さした。
「はい。かまいませんが・・・今、防護服を用意いたしますので少々おまちください。」
アワヅはほかの研究員に防護服を出すように指示した。

「俺は要らないが、こいつはどうかな・・・。とりあえず、中に入れてくれ。
で、こいつが倒れたらお前たちが防護服を着て引っ張り出すのだ。」
「ケフカ様、それは危険なのではありませんか?」
「ま、ものは試しだ。」
ケフカはアワヅの制止をふりきって、魔導エンジンの中へ入るスイッチを押した。
ドアが開いた。

「倒れちゃうんですか?僕は・・・」28号はケフカのあとに続いてエンジンの中へ入った。
壁には複雑な配管があり、模様のようにクリスタルが埋め込まれていた。
まるで魔方陣のようだ。
空調が効いていて部屋の中は涼しかった。
「さあな。ここがエンジンの中だ。シド博士は魔導機関と呼んでいるがな。もう一つドアを開けると、中心部だ」
「わぁ・・・どきどきしますねー。」
ケフカは入ってきたドアを閉めてから、中心部へのドアを開けた。
「これがガストラ帝国の技術の結晶さ。」ケフカは先に進み、28号に中心部を見せてやった。
「これが・・・・・・・・?」


セブロン船長は船長室でコーヒーを飲んでいた。
一体ケフカは何故朝の挨拶などに来たのだろう?と考えていた。
セブロン船長は、ベクタ海軍に入って5年になる。
そのまえは、商船を海賊から守る護衛船の船長だった。
ジドールのある有力な貴族に紹介されて、ベクタ海軍に自分の船とクルーと共に入ることになった。
仕事の内容は今までと変らなかった。
帝国の商船を時折現れるモンスターや、海賊から守る事であった。
しかし、今回の任務は違う。

苦楽を共にしてきた自分のクルーはこの船には4分の1程度しかいない。
機関士たちのかわりに、魔導研究所の連中が乗り込んでいる。
指示した速度は出してくれる。
が、肝心の魔導機関の仕組みについては船長に対しても秘密であった。
万が一故障した場合でも、銀の人魚号の現在位置から1週間以内の位置にいる
帝国海軍の船がフォローに向かうという上層部からの説明だった。

船長は魔導機関を初めて見たときの不安を思い出していた。
あの縦横3m奥行き5mの銀の箱から感じられるいいようのない胸騒ぎ。
中は危険ということで見せてもらえなかった。
そうだ・・・あれは、凶暴なモンスターが現れる前の胸騒ぎに近い感覚だ。
なんともいえない不安。

それは、ケフカの淡く輝く薄いブルーの眼を見たときにも感じた。
魔法を利用する魔導という未知の技術に対する不安だ。
技術者はこういっていた。
「理論上なら、この魔導機関はこの船を時速40ノット(約時速74km)で3年間走らせ続ける事が可能です。」
そんなバカな、と、その時船長は思ったものだ。
しかし、大砲とも爆薬とも違う魔導レーザーの威力を見てその気持ちは失せた。

自分の全く知らない原理で途方もないエネルギーを生み出す技術・・・。
この船を追い越せる船はないだろう。
他国が100年かかっても追いつけないような技術が使用されているのだ。
この力は使い方をあやまるととりかえしのつかないことになる。
1000年前にあったという、魔導大戦のときのように・・・。

セブロン船長は壁にかかっている妻と子供たちの写真に目をやった。
ジドールの家で子供たちは十分な教育を受けている。
16歳になった長男は帝国の水兵養成所に入りたいと手紙に書いてきた。
セブロンはまだ返事は考えていない。
自分で自分の生き方を決めてもいい年だとは思う。

これからガストラ帝国の脅威となる国の数はそれほど多くはないだろう。
他国に較べて圧倒的に高い技術力がある。
他の大陸の国と戦争をしても、おそらくまける事はないだろう。
しかし・・・帝国に入れば息子も魔導技術に関わることになる。
セブロン船長は、自分には仕組みが全く理解できない魔法の力を戦争に利用している事が不安なのだと
ふたたび思いかえした。
ジドールは貴族や金持ちの大商人ばかりの町で政治的には中立を保つという伝統がある。
ただし、血筋や身分に拘るので自分の力だけで出世する事は難しい。
彼は自分の背中を見て水兵になりたいと夢を描いているのだ。
手紙に、賛成しかねる、と書いたら息子はがっかりするだろうか・・・。

とにかく、はやくこの任務は終らせたい。
ケフカ様を東大陸でおろして、地球を一周して出発してきた基地へ戻りたい。
・・・・・・・・・・・・そう、船長は思った。

28号は魔導機関の中心部にあるものを見た。
それは、透明なケースに収められた、人間とモンスターともつかない者の生首であった。
ドラゴンのような角が耳の上からはえていて、輝くサファイアのような青い髪が培養液のなかで揺れている。
舌のない口を開け、その目はきつく閉じられていた。
首の付け根からは太いねじれた血管が15pほどのびていて、赤黒い胎盤のような組織につながっている。
血管は規則正しく脈打っていて、それが生きている事をあらわしていた。

「ケフカ様、これは・・・なんですか?」
「これが幻獣。こいつから、魔力を抜き取ってこの船は動いている。」
幻獣の顔には深い皺が刻まれ28号には、ひどく痛々しいものに見えた。
まるで、重傷をおった人のような顔だと思った。
「幻獣?・・・・・なんか、苦しそうですよ。」
幻獣って何ですか?と質問する余裕が28号にはなかった。
「かもな。ふーん、魔力の低い奴がそばに来るとたいがい倒れるのですが、おまえは平気なのですね。」
「こんな・・・さらし首をみたら倒れるんじゃないですか?普通の人は・・・」
「そうなのか?こいつは暴れるから俺がばらばらにしてやった。見ることも話すことも聞くこともできないようにしてある。」

「ひどい・・・」
こんなふうにして生きているくらいならいっそ殺したほうがいいんじゃないのか?と28号は思った。
「ひどいか?こいつはたまたまこういう運命だった。
俺様がやらなくても、皇帝か他の誰かがやったろうさ。」ケフカは薄笑いを浮かべながら言った。
「・・・・・・・・・こんな事をしているなんて、知らなかった。」
28号の両手は硬く握られていた。

「そうだろうな28号。いいことをおしえてやろう。
お前の魔力がもう少し高いと判断されていれば、お前がこの中にいたかもしれん。」
「僕が?」
「廃棄処分といったって、袋につめて川に流すわけじゃない。魔力を抜き取って解体され、散々研究されてから捨てるんだ。」
「・・・・・・・・」うつむいた28号の目から涙がこぼれおちた。
それは、28号が短い人生でうけた一番の衝撃だった。

しばらくしてケフカが口を開いた。
「下手をすれば俺様もこんな具合になっていたかもしれない。」
「ケフカ様が?」
「昔、あやつりの輪を作ったとき、俺の頭にはめて実験したのだ。おまえ達には服従器といってるあれだ。
僕チンは反抗的でしたからね。・・・・・2日ほど我慢していたが誰も外してくれん。
腹がたったので壊してやった。はめた直後なら俺をこうすることができる状況だったよ。」
「・・・・・どうして、ばらばらにされそうになったんですか?」
28号は手の甲で涙をふいた。
「政治的なものさ。俺様がよっぽど邪魔だったんだろう。魔導研究所の職員に圧力をかけた奴がいたのさ。」
その人は、多分ケフカ様に殺されたんだろうなと28号は思った。

「これは・・・・」と28号は幻獣を指さした。
「楽にしてあげることはできないんですか?」
「こいつだって無限に生きているわけではない、そのうち死ぬ。・・・・・死だけが平等だ。
外にいる奴らも、わずかばかりの金や名誉のために帝国に忠誠をつくしている。こいつと立場はかわらないのにね。
シンジラレナーイ!」とケフカは嘲った。
しかし、28号はもうケフカの言っている事が耳に入らない状態だった。

これは・・・多分・・・殺すよりもやってはいけないことだと、28号は思った。
28号は決意した。
―――このケースごと幻獣を破壊する。
どんな材質なのかと左手で軽く幻獣の入っているケースに触れた。
ケースの中が一瞬青く光り、28号は昏倒した。
「ふーん・・・やっぱり、倒れたか・・・。耐久力に欠けるな。」
と、ケフカはつぶやいてから研究員を呼びに行った。


バズことボーズリー曹長は釣棹をながめながら自分の軽率さを呪っていた。
まいった・・・ケフカがまさかこの船に乗ってくるとは思わなかった。
あいつは船酔いがひどいので、船には乗らないという話だったのに。
今度の砲撃訓練が困った事になる。
ま、証拠はなくなることは確かだから、あんなことで軍法会議にかけられることは・・・・
・・・・・・・・・・・・・多分ないだろうとは思うが、自分が犯人とばれたらケフカに殺される可能性がある。
まったく、誰があいつをこの船に乗せたんだ?
海中の魚がバズの棹を避けているらしく、釣竿はぴくりとも動かない。


「おい、目を覚ませ。おまえは、これくらいでは死なないはずだ。」
ケフカに頬をぴしゃぴしゃ叩かれて28号は目を覚ました。
特別船室のベッドの中だった。
「・・・・・・・ケフカ様?」
「幻獣をみて倒れたのだ。」28号の横に腰掛けたケフカが顔を覗き込んでいる。
28号の目から涙がとめどなく溢れた。
「怖かった。あんなに怖かったの生まれて初めてですぅ―――――」
28号は怪力でケフカの肩を引っ張ってケフカの胸に顔をぐりぐりとこすりつけた。
「うわっ。鼻水をつけるな28号。汚いっ!僕ちんがたまに心配してやったのにっお前は恩を仇で返すのかっ!」
しゃくりあげながら28号は答えた。
「あとで洗濯しますから・・・」
「そんなに怖かったのですか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
28号は断続的に身体を震わせながらケフカに抱きついた。
ケフカの肋骨が、みしりと音をたてた。

幻獣の首が入っているケースに触れた瞬間、28号の意識は重い咆哮の中にいた。
それは果てしない苦痛と憤怒と憎悪の叫びだった。
28号と幻獣は一瞬共鳴した。
・・・・・・・・我を滅ぼせ・・・・・・・・
28号の意識の中に幻獣の声が響いた。

「ふーむ・・・。幻獣がそんな事をお前にいったのですか。」
28号が倒れた時の体験を話すとケフカは珍しく興味津々という顔つきになった。
28号はクリティカルつっこみを頭部にうけてできたコブを濡れタオルで冷やしていた。
「あれは、ひどすぎます。」
「で、おまえはどうしたいのです?」
「望みどおり、殺します。ダメですか?」
28号はケフカの表情をうかがった。
「あれを殺すのか。別にかまいませんよ、あれがどうなろうと私の知った事じゃない。」
予想外の答えだった。

「え・・・。とめないんですか?」
ケフカは自分のベットに横になると、アヒルちゃんを自分の胸の上に載せた。
「止めはしないが、今はやめろ。船が止まると俺様の苦痛がひたすら長引くから。
・・・・・そうだ。やるんなら、この船が軍港第4基地に戻ったときがいい。
私のクソッタレな任務が終った後だ。それでいいか?」
「はい。」
「魔導機関の中は、魔力が外に漏れないよう結界が張られているのだ。中で魔法を使うのは魔力が高くないと難しい。
おまえではどうでしょうねぇーー。夜、こっそり侵入して機関から幻獣を外して、それから始末したほうがいいでしょう。
そのあとで、外から魔導機関を壊すのがきっとベストですね。」

何故こんなにケフカ様は協力的なんだろう?
「・・・・・・・・・・・・ケフカ様、そんなにこの船がお嫌いなんですか?」
「フン。大嫌いだよ。」
不思議だ、と28号は思った。
ケフカ様は幻獣をばらばらにしても何も感じないんだ。
魔導機関のためにばらばらにしたのに・・・。
・・・でも、船が嫌いだという理由で、魔導機関も壊していいんだ。
なるほど。
たぶんこれが、自分を中心に世界を回すということなんだろう。

「ケフカ様、お願いがあるのですが・・。」
「壊す時は俺様が率先して手伝ってやる。その時が楽しみですね。」
ケフカはアヒルちゃんの頭をなでるとニヤリと笑った。

28号は甲板へ出た。
ちょうどお昼時で人影はなかった。
自分の気持ちに整理をつけたかったのだ。
殺さなければ自分が殺される・・・軍隊なんてそういう組織なんだ。
僕が生まれたのは、ガストラ帝国の敵を倒すためなんだ。
でも、殺すのと苦しめるのとは違うんだ・・・。
・・・・・・・・・違うと思いたい・・・。

「28号さん。」
どんよりしている28号に声をかけたものがいる。
下っ端乗組員のソレルだった。
「調子、悪いんですか?」
「え?あ・・・いや・・・ちょっと・・・。」
「今日のお昼は羊の肉のから揚げですよ。」
「ああ、それケフカ様あまり好きじゃなさそう・・・・・・・・。どうしよう。また怒りだしそう・・・・。」
「ははは、大変ですねぇ。」

「ソレルさん。突然だけど、殺されるのと敵に捕まってひたすら拷問されて苦しいのとどっちがいいです?」
「うーん。まだ、拷問のほうがいいかな・・・。死んだほうがましって場合もあるだろうけど・・・。
死んだら脱出できませんしね。希望のあるうちは辛くても生きている方がいいですね。」
「なるほど。」と、28号は深くうなずいた。

「じゃあ、ソレルさん。えーと、手足を切られて目も耳も潰されてひたすら拷問されるのと、死ぬのでは?」
「あ・・・それだったらまだ死んだほうが・・・・まさか28号さん・・・。
今がひたすら拷問されて苦しい精神状態だとか・・・。
そうなんですか!?
あの、僕で良かったら何でも言って下さい。力になりますよ。」
と、ソレルは28号の手をひしっと握った。
「ありがとうございます、ソレルさん。・・・そのうち、何かお願いするかもしれません。」
返事はしたものの、なんか誤解があるような気がした28号だった。


つづく
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