金紗のベールとノクターン  その3   by ZAZA9013

 

そうして、その夜、再びフランちゃんとルタちゃん人形に囲まれ、ケフカは眠った。

28号は応接室のソファーの上でモルボルちゃんと共に眠った。

28号は一緒に生活する=やる・・・じゃないんだな、という事を学習した。

嗅覚、視覚ともに優れている28号は

「ケフカ様は好奇心はあるけど、僕には欲情しないようだ。」

と、判断したのだ。

 

自分が魔法の力を使える人間である事が、ケフカ様の人間なんて大嫌いの原因なのかな、

とも考えてみたのだけれど、判断材料が少なすぎる。

それに、ケフカ様は28号が今までに出会ったことのないタイプの人間だった。

きまぐれで、怒りっぽく、自分の事を俺だの私だの僕ちんなどと、言うたびに違う・・・。

皇帝の次に偉いはずなのに、帝国の事などなんとも思っていないようだし・・・。

うーん・・・28号の出した回答は、

「よくわからない人だけど、僕はケフカ様といるとドキドキする、それに、好き。」であった。

 

次の日、また違う人が朝食を持ってきたのだが,特にケフカは怒ることなく静かに食べた。

28号に身づくろいを手伝わせ、顔に厚化粧をすませた。

「お前を拾ってきたのは私ですからね。あちこちの部署に紹介しないといけません。

通行証も、作ってもらわないといけませんし・・・・。ま、ごあいさつにいきましょう。」

「はい、ケフカ様。」

「しかしねぇ・・・。お前はやっぱり備品扱いにするべきなのか、

とりあえず、人間扱いにしておくべきなのか・・・・。」

「僕を見た感じはどうでしょう?ケフカ様。」

「俺には、人造人間にしか見えんのだが・・・。お前が人造人間というのも、城内にあまりばれてほしくないのだよ。

どこから情報がもれるかわからないしな・・・・。とりあえず、人間扱いにしといてやるがつけあがるなよ。」

「つけあがりませんよ。服脱いだらばれちゃいますし。」

「そうだ、服は人前では脱ぐなよ。あと、余計な事は言うな。」

「はい、ケフカ様。」

「じゃ、まず人事課と内務局と帝国軍司令部だな。おまえは、ここから俺様の仕事を運んでくるのだ。

・・・どうでもいい仕事だがな。」

「はい・・・」

「どうでもいいんだが、機密書類だの予算の書類だのが多い。作戦企画書、地方の行政予算とかも来る時がある。

落としたり、なくしたりしたら、折檻しますよ。」

「折檻ですか・・・・。」

折檻って、どんなことするんだろう・・・ケフカ様。

質問したかったのだが、余計な事は言わないようにする28号だった。

「じゃ、いくぞ。28号。」

 

帝国城内を28号はケフカの後について歩いた。

ケフカはお気に入りの白い羽根飾りのついた緑色のマントを翻し威風堂々と進んでいく。

警備兵がケフカが通るたびに最敬礼をする。

すれ違う職員たちも皆頭を下げる。

 

えらいんだなあ・・・ケフカ様って。

僕が軍にいたときは、挨拶ったって、よう相棒だのおはようクソッタレとかそんなのばっかりだったなあ。
ああ、なんかすごく高級な感じがする・・・。いろんな人や役職があるんだなぁ・・・。
ケフカ様ってすごいんだなぁ・・・。と、28号はひそかに感服していた。

 

「帝国軍司令部へまず行きます。・・・ここには、軍関係の書類を持ってくることになります。

お前がとりに来る事はあまりないとは思いますが・・・。」

警備兵が大きな両開きのドアを開けた。

 

大きなホールのようになっていて、中央には世界地図を模したテーブルがあった。
周囲には通信装置らしいものがある。

多分、ここにいれば、各地の戦況が一目でわかるのだろう。

 

「シュリーデル准将!」ケフカが叫んだ。

中央のテーブルで、年季の入ったパイプをくゆらせていた白髪の将校が立ち上がった。

年は60歳前後で、姿勢がとても良く、軍服姿が決まっている。

「ケフカ様、おはようございます。」

「新しい俺の秘書だ。名前は28号。多分何も解らん。来た時はこいつに色々教えてやってくれ。」

「28号です。よろしく御願いいたします。」

「なかなか有望な感じがするね。解らない事があったら何でも聞いてください。」

28号の印象ではシュリーデル准将は人の良さそうな感じがした。


「28号の通交証と身分証はまだ出来ていないのだ。内務局で作らせてから、こちらに出すようにする。」

「はい。彼は軍に在籍していましたか?」

「あーーその辺も機密事項なのだ。」

「なるほど。解りました.

「では、よろしく頼む。」と、ケフカは帝国軍司令部を出た。

 

「ケフカ様―」

「何だ、28号。トイレでも行きたくなったのか。」

「中、見学したかったですぅー。新型の通信機あったみたいだしー」

「馬鹿もんが、何かで行ったついでにしろ!
・・・・・なんだか、お前一人で城内をうろうろさせるのが不安になってきましたよ。」

「大丈夫ですよ――。」

「そこが不安の素だな・・・・本当に大丈夫なのか?」

ケフカが28号を振り返って見た。

28号は思わず下を見てしまった。

 

「次は内務局の人事課だ。ここは少し脅しておくからお前は余計な手を出すなよ。

最近たるんでるから、しめないとな。」

「はい。」

 

ケフカは人事課のドアを開けた。

「おはよう、諸君。」

突然のケフカの襲来に、一同総立ちとなった。

七三に分けた黒髪をこてこてのポマード(チック?)で固めた人事課長が、ケフカの所へ飛んできた。

「おはようございます。ケフカ様。今日はどのような御用でありましょう。」

人事課長は、昨日の言動がまずかったのだろうか・・・と、挨拶をしつつも上目使いでなかなか顔が上がらない。

くの字に身体を曲げたままケフカの次の言葉を待った。

 

「うん、お前らでは当てにならんから、この俺自ら秘書官を発掘してきた。」

「ははーっ。そうでありますか。」人事課長は、まだくの字のままである。

「何がそうでありますかだ。お前らが役立たずを次々と俺様によこすから首にするんだ!」

「はい。いつもいつも、申し訳ありませんでした。」

ふとケフカは窓際の席にいる職員を見た。

「コラッ!おまえ、書類の影で菓子食うなっ!」

ケフカの指さした先には、ファイルをたててポテトチップスを食べでいる奴がいた。

「ああっ。クリマー!何してるんだっ」人事課長が悲鳴に近い声をあげる。

ケフカはブリザドを唱えた。多少アレンジしてある。

クリマーの頭上に、すいか大の大きさの氷の塊が出現し、クリマーを直撃した。

バキャッ・・・。氷は床に飛び散り床を白く染める。

クリマーは気絶したようであった。

 

「まあ、無能な職員の事はさておきだな。こいつは28号という。

お前らと同じくらいの役立たずで、おまけに何も知らん。

・・・・・だが、耐久力ではお前たちより一歩ぬきんでている。挨拶しろ。28号」

 

28号はケフカの頭につけた羽根の陰から顔を出した。

そして笑顔で挨拶をした。

「28号といいます。どうかよろしくおねがいしまーす。」

体格はしっかりしていて一見軍人風だが、その無邪気な笑顔は
・・・・・ケフカとは対照的に
、極めて人当たりの良さそうな青年に人事課長は思えた。

「お名前は28号様・・でよろしいのですか?

「こいつは、国籍も雇用記録にもファイルには載ってない。書類を整備して通交証と身分証を発行するように。」

「はい・・えーと、28号様。お給料はどの銀行口座に振り込みましょう?

「えっ!もらえるんですかっ!」

「何!くれてやるのかっ!」

28号の嬉しそうな声とケフカの嫌そうな声がハモッた。

「は・・・?規定のお給料をだしませんと・・・」

「むぅー―・・・」

作るのに何万ギルと5年もかけた、この阿呆に更に給料までやるのか?

金の無駄遣いだと、ケフカはムカッと来たのだ。

「3ヶ月は試用期間だ。正職員じゃなくバイト扱いにしろ。」

「は、はい。」人事課長は28号に思わず同情した。

 

3ヶ月どころかケフカの秘書で1週間と持った人間はいないのである。

良くて退職、悪ければ城内で永遠に行方不明・・・・。

しかし28号は笑顔でこう言ったのだ。

「ああ、もらえるんですね。よかった。」

彼の笑顔に、人事課の職員一同が思わず同情した。

 

「ではよろしく頼む。」と、ケフカは28号をつれて人事課から去った。

ガストラ帝王、内務局長、内務大臣、侍従長、帝国城警備隊に28号を紹介した。

ついでに、厨房まで行って「青臭い人参とピーマンと生のセロリは俺にだすな」と、文句まで言って来た。

 

「ケフカ様、お城を一周してしまいましたね。」

「こんなつまらんことで午前中がフイになった。・・・・・・人事課から来た職員ならここまでする必要はないのですがね。

お前は自分が思っているより遙に重要な仕事をするんですから、ま、しかたないですね。ああつかれた。」

「ほとんど、どこへ行っても文句があるんですね、ケフカ様。」

「黙れおしゃべり人形、向こうの連中が悪いのだ。」

「そうなんですか。」と、2人はケフカの執務室へ戻ってきた。

 

執務室の椅子に座ったケフカは28号に昼食の電話をかけるよう命令した。

「ケフカ様―、お魚とお肉の二種類あるそうで、どちらがいいです?」

「・・・・魚。」
「はい、お魚でよろしく御願いします。」


ケフカは大きな机に肘をつきまた何か考えているようだ。

「28号。」
「はい?あ、選択できるメニューのある日っていいですねっ」

「ああ、ま、いいよな・・・。いや、そんな話ではない。

お前はここの政治の流れって物がわかってるのか?」

28号はぱちぱちと、2回瞬きしてから答えた。

「いーえ。全然解りません。」

ケフカはため息をついた。

「・・・・だろうな。俺も普段は無視して好き勝手にやっているがな・・・・、
書類運びはその辺理解しておいたほうがいいぞ。」

「はい、あの・・・ぜひ教えていただきたいと思います。」

「教えたら、お前・・・。俺様に何をしてくれる?」

「誰かの暗殺とか・・」

「そんなの俺様がやったほうが早い」

「では、できることなら何でもいたします。」

 

「うん、じゃ耳掻いて」「はい?」

ケフカは引出しから銀で出来た耳掻きを28号に渡した。

応接室のソファーへ行き、28号を座らせると28号の腿の上に頭を乗せた。

「最近なんか耳が痒いような、中で何かが動いているような・・・」

「これで掻くんですね、やってみせます!初めてですけど」

「なにっ!」ケフカは反射的に耳を手で覆って起き上がった。

「まず、お前が横になれ。手本を示すから。」

「はい」28号はケフカに膝枕してもらって、妙に嬉しい。

なんかすごくどきどきするのだ。

 

「痛かったら痛いと言え。それ以上は掻かないから。」

「耳を掻くって、耳くそをほじる事ですね?初めてだからうれしいなあ・・・」

「今までどうやっていたんだ?」「指で・・・」

「ふーん。まっすぐで掘りやすい耳だ。しかも何だか詰まっている。」

「つまってますか?」

「少しだまっていろ。掘りがいがありそうだ。」

 

「なんだ・・・これは。」黄色いスポンジ状のものが出てきた。

28号に見せる。

「ああ、これ。大砲の音がうるさかったんで耳栓したままだったんだ。あははは・・・・・。」

「・・・・・耳栓3年か、汚いですねぇ・・・・反対を向け」

ケフカは嫌々反対側の耳栓も取ってやった。

「あー聞こえがいい。とても、よく聞こえます。」

すっきりしたのか28号は嬉しそうだった。

「よかったな、今のが手本だ。」

 

28号はケフカから耳掻きをうけとると、座っているケフカの右耳を見た。

「・・・・・・」

ちり紙を握り締めかきはじめた。

「28号、そのあたりに大きいのが引っかかっているような気がして。

昨夜からがさがさいうんだ。」

「・・・・あ、取れましたよ。・・・うわっ。」

「大きいのか?」

「いえ。・・・・イモムシとしては小さい方ですが。足が沢山・・うわーっ。ほら。」

と、ちり紙をケフカに突きつける28号。

「いいっ、見せんでもいいっ!」

「でも、ご確認なさったほうが。」

「そんなもの、絶対見ないぞ!」顔をそむけて背を向けるケフカ。

 

「じゃ、反対も掻きましょう」と、ケフカの反対側にまわる28号。

「いや、もういいっ。」

「でも、むこうに1匹いたら、こっちにも1匹はいるんじゃないんですか?」

「なんだと?」

「奥にはもっとうじゃうじゃいたりして。」

「・・・・・・・・。たのむ。」

「ではじっとしていてください。」嬉々として左耳を掻きだす28号。

「ああ・・・。こっちも。・・・・とれましたよ。」

「見せろ。」
「嫌です。」
「見せろって!」

「精神衛生に悪いから見ないほうが、よろしいかと・・・」

28号の手からちり紙を奪い取るケフカ。恐る恐るちり紙を開く。

 

「!」・・・・・・・・・・ただの耳くそだった。

「やーいやーい!だーまさーれたーっ!」

嬉しそうな28号。

「クッ・・・こいつうー・・・・私を引っ掛けましたねッ!」

「ひっかかるほうが悪いんですようー」

ケフカの指先が青白く輝いた。

自分の部屋だから加減してブリザドを放った。

28号はソファから飛びのいた。魔法で氷付けにされる前に天井の隅に両手両足で張り付いた。

再びブリザドを28号へ向けて放つ。天井の隅が凍りついた。

28号はケフカの背後へと着地した。

「ちっ・・・ちょろちょろと・・・」

「素早いでしょう。」

「あたりまえだ。そう作られたんだろう。・・・・おい。この氷が溶けたら床拭くのはお前だぞ。」

「えっ。」

「魔法はもう使わないからちょっと来い。」

「さっきの冗談ゆるしてくれます?」

「ああ、許してやる。」

「ほんと?」

 

「耳掻きの続きをして欲しいんだ。」頭を掻きながらソファに座るケフカ。

「あっはっは・・・笑ってもらえるとおもったんですけどねぇ・・・」

と、ケフカの隣に座る28号。

「笑えないな。」とケフカは手の甲で28号の胸のあたりに軽く突っ込みを入れた。

「うわぁあああっ。」28号はソファから後へ一回転して床へひっくり返った。

「フン。ざまみろ。」ケフカは笑った。

「な、なんですか?今の・・・馬に蹴られたかと思いました。人間なら死んでますよ。」

と、立ち上がる28号。

「MPを消費して軽い突っ込みでもクリティカルヒットを出す技だ。」

「はー・・・なるほど。」

「そういう剣なんかもあるんだ。俺様は力は少ないからな。」

「勉強になりました。」28号は土下座した。

 

「では、お前に仕事を与える。帝国議会まで行ってきて今月の会議のスケジュールを取って来い。」

「はいっ。」

「あ、お昼来るまでもどってこなかったら、お前の分食っちゃうから。」

「ええっ!」

血相を変えて28号は部屋を走り出ていった。

 

一人残されたケフカは・・・。

「あいつに一番効果的な脅しは、飯食っちゃうぞ・・・なのか?」

と、こめかみのあたりを人差し指でぐりぐりもんでいた。

クビといったら喜ぶだろうし、培養ベッドへ戻すと言ったら逃げるだろう。

魔法は力技でかわすし・・・。

しかし、思ったよりも優れている。

普通の人間なら、魔法がかかったら逃げられない。

さっきの軽い突っ込みでも、良くて骨折、悪ければ動かなくなっている。

 

人間よりも長続きするかもしれん・・・・。

人形だからな。丈夫だし。と、ケフカが思った時ノックの音がした。

ケフカは執務室まで行った。
ちっ、面倒だなー。こういうとき応対するのが秘書の仕事なのに。肝心な時に居やがらないとは。

などとおもいつつドアを開けてやると、新人らしい見慣れない給仕係りの青年だった。

「失礼いたします。ケフカ様、昼食でございます。」

「はー、今日は天気がいいから外で食べる。」

「はい、了解しました。」

了解か・・・。軍からの引き抜きだな、コイツは。

ケフカは、ワゴンをベランダの側へ持っていき、テーブルクロスを敷く新人の姿を、
窓枠によりかかり見るともなく見ていた。

何度も練習したのか、手つきは不器用だがスピードは速い。

すぐに、魚料理とスープとサラダとパンとライスとコーヒーサーバーがセッティングされた。

 

「終了しました。」と、給仕係りは執務室へ入ろうとした。

「ご苦労。・・・おい、サラダにセロリが入ってるぞ!

と、軽く手の甲で青年の背中に突っ込みを入れた。

ドサッと音がして、不幸な給仕係りは動かない。

「ん・・・。ああ、ついMPを乗せてクリティカルヒットを出してしまったな。

大丈夫か?すまん、・・・みまちがえた。

セロリじゃなくてあれはブロッコリーの芯を削いで模様にしたんですね。」

給仕係りの背中に耳を当ててみる。

心臓が動いていない。

衝撃波が、心臓を直撃したのだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・めんどくさいな。

とりあえずデジョンの魔法でどこか遠くの次元に飛ばしてしまいましょう。

証拠が残らないから楽だしな。

と、ケフカはあっというまに、給仕係りの死体を消してしまった。

 

「ま、昼食にしますか・・・。」

と、ケフカがバルコニーの椅子に自分で座った時、

たんっ!と、バルコニーの手すりに書類を持った28号が飛び乗ってきた。

「ああ、よかったー、間に合ったっ!」

「間に合ってよかったですね。28号。ちょうど食べる所でしたよ。」

「セーフにしてくれます?」

「ああ・・・。まず、手洗って来い。」

「はいっ!」

 

帝国議会は帝国城の2階、ケフカの部屋は37階。

しかも、帝国城はピラミッド型をしているので下になるほど広く、議会まではエレベーターを使っても30分はかかる。


28号が戻ってきた。

「廊下は走るなといったろう!」ケフカが一喝した。

「すいません、行く時はつい全力疾走をしてしまいました。」

「怪我するぞ。お前とぶつかったら!」

ケフカは28号に肩車された時の事を思い出して言っていた。

けっして、心底から他人の心配をしたわけではなかった。

「はい。帰りはそれを思い出して、お城の外壁を走ってきました。
バルコニーとか砲台とか足がかりが思ったより多くて・・・。」

「・・・・外壁も、走るな。・・・・警備兵が困るだろう。」

「撃たれませんよ。」何故か自信満々の28号。

「そうじゃなくて、不審者が外壁を走り回っているなどと通報されてみろ。

そのうちお前の正体がばれてしまいますよ。・・・・人間扱いされなくなりますよ。

給料も出ないし、備品扱いですよ。」

その言葉は28号に効いたようだった。

「あっ・・・・。それはちょっと・・・」

やはり、人間になりたいのだ。

「うむ・・・。以後気をつけるように。」

「はい。・・・・もう、お昼食べていいです?」

「ああ。」

 

2人は無言で昼食を食べた。

白身のお魚をぱりっとから揚げにしたものに、とろりとした半透明の

甘めのたれが、長ねぎなどの香味野菜とからめてある。

・・・・・ああ、こんなおいしいもの食べた事が無い。

と、28号は思った。

このスープのふわっとしてひらひらとした卵。

他に具は入っていないのにほんのすこしのとろみが、食欲をそそる。

ごまをベースにしたドレッシングも甘めの野菜とマッチしている。

はーん・・・ごはん大盛りにしてもらってよかった。人間っていいなあ。

 

突然ケフカが大声で笑い出した。

「ハハハハハ・・・。何という顔で食べているのです?そんなにおいしいですか?」

「はい。幸せです。こんなの食べるの初めてですから。」

「今の顔、お前が一人で抜いてる時の顔と一緒ですよ。」

「そ、そんな顔して食べていました?」

「保証する。」

「・・・・・・・・・・。」

「コーヒー入れろ。」

「はい。」

「食事が終って一休みしたら、会議の予定をみて今週のスケジュールをたてましょう。」

「誰の?」

「俺様のっ!それでついでにお前の予定も決まるんだ。」

「はい。」

もしかして、この人造人間はとんでもない大間抜け野郎なのか?

と、ケフカは思った。

 

金紗のベールとノクターンその4につづく