名のってなんか、あげません。  作:ZAZA9013



西大陸でロック・コールはとある洞窟にお宝を探しに入っていた。

洞窟そのものは太古に使われた形跡があり、

進むのにそれほど困難なものではなかった。

ただ、ガストラ帝国軍が洞窟の近所に陣地を敷いていて、

多少警備が厳しかった事くらいである。

 

ロックは隠し扉を見つけると、ランタンで照らしながら狭い階段をゆっくりと

おりていった。

洞窟の入り口や中には警備兵の姿はなかった。

入り口の外にはいたけれど・・・。

 

階段を降りて扉を開けると、そこは小さなホールになっていた。

床に黒と白のタイルがあり、そこに頬かむりをした金髪の男がいた。

どうしようか?とロックは迷った。

男はタイルの上を行ったりきたりしている。

「ドロボー!!」ロックはいきなり叫んだ。

 

男は飛び上がった。

「わ、わ、わたしは、怪しいものではありませんよ。」

ロックは男の装備をさらっと見た、明かりにナイフにロープにノート・・・・。

そしていかにも怪しい頬かむり・・・・・・ご同業か?

 

「ははは・・・帝国軍が警備しているのに良くここまで来れたな。」

ロックはほがらかに話し掛けた。

万が一この男が帝国軍だとしても、単独では来ないだろうと

ロックは思ったのだ。

 

白い手ぬぐいで頬かむりをした怪しい男は手元のノートをめくりながら言った。

「レオ将軍の手下に見つかったら大変ですからね。

何のためにここに来たとか、許可は取ったかとか、うるさくてしょうがない。

だから、こっそり一人で探険に来たのです。

む?君こそこんな所でちょろちょろと・・・・さては・・きみは・・・・ネズミ?」

 

 

「なぜ、ねずみ?」ロックは尋ねた。

「洞窟といえば、クモ、コウモリ、ネズミ、モンスター。

クモだとすれば手足の数が合わないし、コウモリにしては羽がない。

モンスターならもう襲ってきているでしょうし・・・・。

故にネズミと判断いたしました。」

「俺はロック・コール。世界の遺跡をとびまわる、トレジャーハンター!!」

キラーンとポーズをとるロック。

「ああ、遺跡ドロボウ!」ポンと手をうち納得する頬かむりの男。

 

「トレジャーハンターと言ってくれ。」

「んー・・・、ま、それはいいから、君、床の白いタイルの上を時計回りに飛んでみてください。」

と、男はロックに指示した。

ロックは言われたとおりにした。

「こう?」

ゴゴゴ・・・と音がして、壁の一部が下がり通路が現れた。

「さすが、ドロボウ、身が軽い。」

「・・・・トレジャーハンター。へー、あんたスゴイな。学者さん?」

「どのへんが学者に見えますかねぇ?」

「んー発想が偏っているところかなー。」

 

頬かむりの男はためらうことなく、通路を下ってゆく。

ロックはそれについていった。

 

通路は広くなり枝道が沢山出てきた。

「さて、どちらへすすんだらよいのやら・・・」

頬かむりの男は自分のノートに視線を落とした。

「あ!モンスターだ!!」ロックは叫んだ。

 

わらわらと、ネズミタイプのモンスター・・・ゴエティアとスタナーが出てきた。

こいつらは、地味に仲間を呼ぶので、結構面倒な敵である。

「おや?・・・まあ、こいつらは置いておいてすすみましょうか。」

男はあまり気にしていない様子だった。

「かこまれてるぜ、逃げられるのか?」と、ロックが聞いた。

こいつらに噛まれたら十分に痛い。

頬かむりの男は懐から大きな袋を出した。

「そーれっ!!ひまわりの種っ!!」

ばらばらと撒き散らすと、モンスターたちは一斉に下を向いて種をあさり始めた。

男はそのすきにダッシュした。ロックもついて走った。

 

「頭脳派の行動だろう?墓ドロボウくん。」男は自慢気に言った。

「そうだな・・・・・でも、帰りに元気いっぱいのあいつらがまた出てくるんじゃないのか?」

「ん?ハッハッハッ。気にするな、墓荒しくん。」

「トレジャーハンター!!」

 

頬かむりの男はノートを見ながらいった。

「では、君。ここから先は階段になっている。注意して進んでくれたまえ。」

と、ロックに道をゆずった。

曲がりくねった細い階段をロックは先に歩いた。

「注意して進むのだぞ。」頬かむりの男が言った。

「・・くっどいなあ。注意してるって・・・わっ。」

ロックが軽く触った壁から勢いよく槍が飛び出してきた。

ロックは、間一髪でそれを避けた。

「どうやらここから先は、みだりに人を立ち入らせないために、ワナが仕掛けてあるようです。」

「わかっているなら先に言えよ!」

 

天井から剣が降ってきたり、巨大な鋼鉄の玉に追いかけられたり、

落とし穴に落ちそうになったりしながらも2人は進んだ。

 

「ふーっ、結構手の込んだトラップだったな。

俺ばっか先頭でちょっと疲れちゃったんだけど・・・。」

とロックは後の男に言った。

「よしよし、さすが本能のみの下等動物、みごとなよけっぷりでしたよ。ネズミくん。」

「うわ、それ、誉められても全然嬉しくないや。」

「ではご褒美です。はい。」

「イヤ、だから、ひまわりの種はいらないから。

・・・・俺、人間だし・・・・・。」

「ま、とにかく進もうではありませんか。

わたくしの調べによりますともうそろそろ終点です。」

「また俺が前を歩くんだね・・・・いいけど。」

 

頬かむりの男は自分のノートから一瞬目を上げると言った。

「不満を言う前に、解決する努力を怠っているのではないのですか?あなたは。」

男の言い草にロックはカチンと来た。

「じゃ、あんた先頭。」

「いやです。」男はきっぱりと断った。

「・・・・・もうっ!」

しかたなく、ロックが再び先頭であるいた。

 

少し歩くと縦横2mほどのと石版があった。表面に文字が刻んである。古代の言葉だ。

「えーと・・・・・・・・・・・・が・・・を…・・・・を・・・・・う?」

「ネズミ君は、やはり字が読めないようですね。

これは・・・人がこの過ちを再び繰り返さぬ事を願う、とかいてあるのです。」

「へぇー、すらすらよめるんだ。すごいね。」

「その下は、これは我々が生きた証、人々の愚かさのしるしである。

と、書いてありますよ。

思ったとおりですね。何かありますよ・・・ここは。」

頬かむりをした男は石碑に向かって何か呟いている。

ロックは男をほおっておいて、自分の目的のお宝がないか物色し始めた。

「レアアイテム、レアアイテム・・・・」古い宝箱をひっくり返しては何かポケットに入れている。

頬かむりの男のそばの床に落ちていた皮製の黒い財布も懐にしまった。

比較的新しいもののようだ。

 

ロックは壁の小さな扉を開けた。そこにはスイッチがあった。

「・・・何のスイッチかな・・・・・・自爆装置だったらイヤだけど・・・・

・・・・・・・・・・・・・押しちゃえ!!」ロックはスイッチをおした。

「おおっ!?」

石版が音をたてて沈んでゆく。

 

その先の空洞にあったのは・・・・・。

「なーるほど、これはたしかに、愚かさの証だあ。ヒョッヒョッヒョッ・・・・」

頬かむりの男はそれを見て奇妙な笑い声をあげた。

ロックも気がついた。

「これは・・・帝国の魔導アーマー?いや、もっと大型で頑丈そうだな・・・。

・・そうか、魔大戦の時の兵器か!?

大型の戦車があった。

 

「そのとおり!これはガーディアンプロトタイプ。魔大戦の時代の兵器の残りですよ。

あの石版によると、後世の人々が悪用しない事を願って、この洞窟に隠しておいたそうです。」

「これは危険だ、このまま埋めておこう。」とロックは言った。

しかし頬かむりの男は右手の人差し指をたてて、チッチッチッと言った。

「いいえ、これは私がいただきます。

君はその辺のガラクタでもお土産にしなさい。」

と言い捨ててプロトタイプに飛び乗った。ライトが光り起動した。

1000年の時を全く感じさせないエンジン音が轟いた。

「おまえは一体何者だ!?」

「名のってなんか、あげません。プロトタイプビーム!」

シュシュ―――ッと空気がこすれるような音がしてプロトタイプの砲塔から

光線が放たれた。

「うわ―――-―――っ!!」ロックの背後の壁が崩れた。

土煙にロックの姿は見えなくなった。

「じゃ、サヨナラー。」高笑いを残して、プロトタイプは狭い壁を崩しながら洞窟を登っていった。

 

しばらくして・・・・石の下からロックは這い出した。

光線は石をこなごなにしたようで、致命傷になるような大きな岩は崩れてこなかったのだ。

咳き込みながらロックはようやくランタンを見つけた。

「ゴホッゴホッ・・・・・うー・・・・ひどい目にあった。

敵陣で出会った人はやっぱり信用しちゃいけないのか・・・?」

ロックはランタンの光で自分の持ち物を確認した。

「薬草、ナイフ、ロープ、干し肉、テレポストーン、ポーション、毒消し・・・宝箱にあった腕輪と

指輪5つと、・・・・ひろったお財布・・。」

ロックはなにげなく財布の中身を見た。

ギルが沢山入っていた。

「うわ・・・・。幾ら入ってるんだろう・・・・26万3千ギル!?すごいや。

・・・・・・・・・・・もらっちゃおうっと。

あ、銀行の通帳だ。帝国銀行しあわせ通帳・・・ケフカ・パラッツオ・・・・・・

あれ?どっかで聞いた事のある名前だな―――?」

 

それから何日もたたないうちに帝国銀行から不正に預金が

引き落とされる事件が起きた。

当時の記録によると口座から引き落とされた名目は

「慰謝料」だったという。

その多くはガストラ帝国に反旗を翻したリターナーたちの

活動資金に流れていったというが、

真実は闇の中である。

 

おわり

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